"Verociraptor Hunting pose" (Horizon 1/3?)

私的ソフビキットの作り方
〜ヴェロキラプトル制作記〜

−ソフビキットってどうやって作るの?−
というご質問をいただきました。
それならば、制作記がてら私的製作法を書いてみようかと。

あくまで自己流のつたない制作方法です。
私の知っていることは、自分の経験や、本・ネット等、他の方からの伝聞などによるモノで
科学的裏付けはありませんので・・・。
100パーセント大丈夫かどうかは保証できませんのでご了承下さい。

塗料や詰め物など、まだまだ良くわかっていない点も多いので
「チミはそうやっているのかね〜」ぐらいの参考にしてください。

制作途中で思い立ったので最初の部分は写真がありません。
「あしからず!」


まずはパーツチェック!

買ったらすぐにパーツチェックをしましょう。
ガレージキットの場合は生産数が少なく
生産期間も短かったりするので
あとからではパーツの入手が難しくなります。

ヤフオクなどで古〜いキットを入手した場合いなどはねぇ・・・
足りなかったらスクラッチかな?



左上がインスト、右上が箱
左下が日本語版インスト(親切!)
右下がカタログ?(チラシ?)
ホライゾンは大きなメーカーなので親切な内容です。



注:購入状態ではありません。
写真を撮る前に、煮て、洗って、湯口を切って(大きなパーツ)しまいました。

なぜか舌と指が2本多いです。(赤丸部分)
形が違うならわかりますが
ほとんど同じ形・・・。


煮てガスを抜く!

まずやることは、臭いをかいでください。
ソフビやレジンは硬化後、数年間ガスを出し続けます。

レジンの場合は型に流すときの流動性をよくするために
揮発性の溶剤が混ぜてあるそうです。
そのガスが抜けてレジンは若干縮むそうです。
ソフビも同じなのかな?

そのガスによって塗料がはがれたり変色したりします。

10年ぐらいたったキットだとガスも出きって臭いもなくなりますが
臭いのする新しいキットだと
ナベに入れてグツグツ煮込んでガス抜きしてやります。

レジンの煮込み
(別レジンキットの煮込み)

変形も直るので古いキットでも煮込んでやる方が吉かと。
ちなみに、湯口は切らずにキャストされた時の状態のまま煮込んだ方が
変形は直りやすいとか・・・。

ナベにギュウギュウ詰めにするとパーツがぶつかり合って変形するかもしれませんので、
パーツが自由に泳ぎ回れるように大きめのナベでやってみてください。
ついでに台所用洗剤を入れておけば離型剤落としにも。

ちなみに変形直しはヘアードライヤーで暖めてもOK。
直ったら冷水で固めましょう。

透明ソフビが濁った!

透明ソフビを煮込んだところ白濁してしまいました・・・。
全ての透明ソフビが白濁するかは分かりませんが十分お気を付け下さい。
透明を生かして制作したい場合は、
試しにゲート部分などを煮込んでみてください。

2008年11月追記

時間がたつと濁りは薄くなり透明感が戻ってきた感じです。
(作品はバーニングゴジラです。)

いろいろ煮込み実験!!

ソフビやレジン、プラ、ポリ等を鍋に入れグツグツ煮込んでみたら・・・

ソフビはフニャフニャになりますが形は崩れません。
レジンはソフビほどではありませんが、かなり柔らかくなります。
手で簡単に曲げられます。
柔らかくなりますがディテールは崩れません。
手で曲げて水で冷やして固めて、また煮込むと自然に元に戻ります。
ソフビもレジンも形状記憶合金のような感じです。
(熱で柔らかくなるが溶けないということかな?)

プラは煮込んでるうちに変形し、ディテールもあまくなって元に戻りませんでした。
(熱で柔らかくなると言うより溶けるということかな?)
ポリは100度位じゃビクともしない感じでした。(モノによる?)

2009年1月追記


よく洗って離型剤を落とす!

レジンキットやソフビキットには
型から抜きやすいように離型剤が塗られています。

インジェクションキットでも
東欧のモノの中には
油ベタベタで気持ち悪いのもありました。

日本のインジェクションキット(プラモデル)については
「国産キットのほぼ全てで離型剤は用いていないとのこと」
(アーマーモデリング誌2013年6月164号P3)
OEM版は含まれないのかな?

2013年5月 本文の一部書き換え

この離型剤によって塗料の食いつきが悪くなり
マスキングをはがすときにペロッといったり
コンとあててパリッといったり・・・。

接着剤の食い付きも悪くポロッと・・・。

とにかくよく洗って離型剤を落としましょう。

離型剤落としには、
・台所用中性洗剤
・クリームクレンザー
・漬け置き型離型剤クリーナー
・スプレー式離型剤クリーナー
などがあります。

煮込んでおけば離型剤もだいぶ落ちているでしょうから
洗う手間は少なくなるのではないでしょうか?

台所洗剤を歯ブラシに付けてゴシゴシすればOKかと。
表面を荒らして塗料の喰い付きを良くするため(足付け)
クリームクレンザーも混ぜれば、なおよろし。


洗う
(別レジンキットを洗っているところ)
(アルマイトの深い洗面器(?)は、むか〜〜〜〜しから家にあるもの(#^.^#)
(大型キットの煮込みにも使ってます)

ついこの前まで「頑固な汚れにマジックリン」が良いと思って使っていましたが
問題は界面活性剤らしいです。
「油汚れに〜ジョイ」が界面活性剤が多く含まれているようです。

AFV系のレジンキットなどで繊細なパーツがあるときは
煮込んだあとスプレーを使っています。

パーツの様子や汚れ具合などに応じて使い分けてください。

ブレーキクリーナ
(別レジンキットをブレーキクリーナで洗ってるところ)
(引火性が高いので必ず屋外でやりましょう。)

余談ですが・・・

ブレーキクリーナはノンキシレンタイプ等、
一部のレジンを溶かしてしまうようです。
ゲート等、不要パーツで確かめてから使いましょう。

また、レジンやメタルキットなどはラッカーうすめ液につけて脱脂したりしますが
ソフビの場合は可塑剤が抜け、縮んで固くなるそうです。
強力な溶剤を使うときは気をつけたほうが良さそうです。


ゲートを切って仮組!

レジンでもソフビでもインジェクションでも
型に流し込むための湯口につながるゲートが付いています。
ソフビの場合はかなり大きいです。

多くの場合、ゲートの一部を切り残し
ノリシロにします。

切り取りには薄刃のニッパーや
クラフトばさみ
ナイフを使います。

私はデザインナイフを使ってしまいますが
刃先が折れやすいですの危険です。
彫刻刀の切り出しなどが良いかも。

固定ポーズのキットの場合は大丈夫かと思いますが
ビリケンのキットの多くは関節可動を前提にしてあって
円形の関節部をキツキツに無理矢理ねじ込む感じで作られています。
ソフビは変形しやすいので
しばらくすると可動部がふくらんできたりしてしまいます。
固定ポーズにする場合は無理矢理ねじ込むのではなく、
すんなり入るように加工した方がよろしいかと。



大きなパーツのみマスキングテープで留めて仮組みしてみました。
しっかりパーツの合いを確認して修正しておかないとあとで泣きをみることに・・・。

このキットの場合は
片足立ちで、しかも接地している足は後ろに引いている状態なので
見た目は動きがあってカッチョ良いですが
バランスが悪くキットのみでは自立させられません。

自立させるために
3ミリアルミ針金を6本差し込んで
バランスを確認しておきます。

詰め物をしていないのでグラグラ。


組み立てて接着!

ソフビに一番相性のいい接着剤は瞬間接着剤だそうです。
仮組みしてテープでとめて瞬着を少し流し込んで
(テープにつくと粘度が低いので表面張力で広がって悲惨に・・・)
固定できたらテープをはがして全面的に流し込むと良いかと。
(少しずつやらないと粘度が低いので意外なところから流れてきて自分を接着するはめに・・・)

瞬着にも粘度の高い物もありますが
奥まで流れ込んでくれるので
サラサラタイプの方が吉かと。


詰め物で強度確保!

ヘタリ防止のために詰め物をします。
詰め物には
石膏やレジンキャストを使うのが一般的なようです。

私はお手軽に軽量紙粘土を主に使ってきましたが・・・。


ソフビは熱で柔らかくなり重さがかかると変形してしまいます。
うちでも立っていた塗装前のウルトラマンが
足首のあたりから前のめりになって・・・。
コレがいわゆるヘタリです。

軽量紙粘土詰めていたのですが・・・。

足の裏から穴をあけてみたら
詰め物が奥まで入っていませんでした。

コレが原因かと思っていましたが・・・
しっかり詰め込んだはずの
前回作ったヴェロキラプトルもヘタリました・・・。

こちらは無理な体勢なので
紙粘土では強度不足だったのかな?

ガメラやゴジラ、ゼットンなどはヘタってないので
足の細さや詰め具合に原因があるのかなぁ。

1/35のソフビの
トリケラトプス、カマラサウルス、ティラノサウルス
には詰め物はせず
アルミ針金を足裏から背中を支えるようにさしてあります。
コレでもヘタリません。
キットの重さも大きな要素だと思います。

詰め物も臨機応変・適材適所・ケースバイケースってところでしょうね。


今回のキットは片足に無理がかかる物なので
3ミリアルミ針金6本に
木部用エポパテを詰めることにしました。

木部用エポパテは混ぜ物がしてあって軽いので採用決定。





まずは足に木部用エポキシパテを詰め込んで針金を固定します。
奥までしっかり詰めないとヘタリの原因になります。
場合によっては足裏からも。



踵から脹ら脛部分を接着し
またまたエポパテを詰めます。



胴体を接着し足の付け根までエポパテを詰めます。
重くならないように詰め物はココまで。
接地している足のみです。

余った針金をテープ留めし
黒い瞬間接着剤(ドロドロタイプ)で固定していきます。
しっぽを付けてこちらにも針金留めをします。




細かいパーツにはピンバイスで穴をあけ
真鍮線を通して接着します。

なくても瞬着の接着力なら大丈夫だと思いますが。



仮組の時はグラグラでしたが
詰め物と接着でしっかりしました。

思ったよりも重心が後ろで
針金はもっと短くてもOKでした。



余った針金は切らずに丸めて
ベースの強度を上げるために接着。



本体とベースが一体になるように足裏にもエポパテの団子を付けてあります。


つなぎ目修正!

レジンでもソフビでもプラでも
つなぎ目修正は模型作りの重要なポイントですね。
特に、こういった生体キットの場合は
自然に見せるのが難しいポイントです。



灰色に見えるのはタミヤのラッカーパテ。
ダークイエローに見えるのは
自家製プラパテ。
流し込み接着剤にプラモの余ったランナーを細かく切って入れて
溶かしてあります。

やすったり彫刻刀で削ったりしたあと
流し込み接着剤を塗って溶かして
生体の感じが出しやすいです。

欠点は乾きが遅くヒケるので
大きな盛りつけには使いづらいです。



ヒザのあたりは大きな段差ができたので
木部用エポパテを盛りつけました。

エポパテは粘土のように使えるので
盛りつけながら生体の感じを出すことも可能です。
木部用を使うのは混ぜ物がしてあって
軽くて、サクサク削れるからです。

今回は段差修正で結構削ったので
粘土のように盛ったときのテクスチャは消えてしまいました。

硬化も早いし、ヒケがないので
大きな盛りつけには向いています。
食い付きは若干悪いようですが
はがれそうになったら瞬着を流し込めばOKです。
また、先に表面をヤスって荒らしておくと吉かと。

食い付きから言うと
瞬間接着パテが一番良いようですが
私は使い勝手からラッカーパテ(プラパテ)やエポパテをよく使います。


工作終了?表面確認!・・・また工作・・・

工作の方が終わったら下地塗装をして表面を確認します。
表面が色々な色をしていると状態がわかりにくいので
単色で塗ってみます。
レジンキットならサフ吹きですが
イリサワのソフビ専用「Vカラー」が一番食い付きが良いようなので
下地に使いました。

色はモンスターブルー。
光の透過を抑えたいので濃い色にしました。
(あとからアイボリーを吹きました)



つなぎ目に、やや不満があったので
再び彫刻刀の出番となりました・・・。

小指の爪が白いのは、実験で
乾燥後に溶剤で落とせるかを試しました。(こんなとこでやるな?)

もっと前の段階の作業ですが
エポパテで足の下の団子を大きくし
エポキシボンドで針金の中を埋めて
ベースの強度を高めました。

このあとでベースには
インテリアバーグ(園芸用)を接着していき
隙間に軽量紙粘土を詰めました。

テクスチャーがアレなので
「岩絵の具」(日本画用)を水溶きボンドに混ぜて塗って
ザラザラにしてあります。
クレオスの水性ウェザリングカラーのラフグレー、ラフサンドでもOKだと思います。
あるいは鉄道模型のジオラマ素材には色々な粒子の大きさの砂が売ってますので
ソレを水溶きボンドや塗料に混ぜて使っても良いテクスチャが得られると思います。


やっぱりキモは塗装!

ソフビには「イリサワ」のソフビ専用「Vカラー」がおすすめ。
食いつきは非常に良く、塗膜に伸縮性があるので変形にも強いそうです。
ただ、かなりきつい有機溶剤が使われているようなので要注意。(要換気・要防毒マスク)
また色数が少ないのも難点です。

食いつきから言うとクレオスのミスターカラーがその次にくると思いますが・・・。
クレオスのビン入りサフ(サーフェイサー)には
プライマー効果もあるようなので
ソフビにも食い付きは良いです。
さらにミスターカラーはサフの方がよく食い付いてくれるようなので
ミスターカラーを主に使うならサフを下地にした方が良いかもしれません。


この辺は私もよくわからないところなのですが・・・
ソフビには水性塗料が良いというのをどこかで読みました。通気性の問題らしいです。
油性だとキットの表面を密閉してしまってガスが抜けなくて問題が起こるとか・・・。

今回買ったホライゾンのキットのインストにはホライゾンの水性アクリルは
プライマーなしでソフビに食いつくとか書いてありましたが・・・
ホントかなぁ〜?売ってないから確かめようがないですが・・・。

とりあえず使っちゃいけないのがエナメル系と油性でもメタリック系、
乾かないと言うかいつまでもベタつきが残ってしまうようです。
タミヤアクリルも相性が悪いとか・・・。
サフで密閉してしまえば多少使っても大丈夫なようで・・・。 

過去の経験でベタつきはありましたが
この会社のこの種類というのは特定できません。
下地のサフの密閉具合が大きく影響してるのでしょうか?

ソフビを柔らかくするために可塑剤が含まれています。
その可塑剤が塗膜に移行し塗膜を柔らかくベタベタにしてしまうそうです。
その際に変色することもあるようです。
可塑剤にもいろいろな種類があるそうで
この塗料で必ず起こるというわけでもないようですが・・・。
とりあえず危険性の高い塗料は避けたほうが無難かと・・・。

・・・話をキットに戻して・・・

イリサワのVカラーのアイボリーを下地に吹き重ねました。
コレは歯や爪の基本色になります。

基本塗装はアクリルガッシュでザッと手塗りしました。



このあと境目などを細い筆で塗ったり
水気の多い塗料を塗って境目をぼかしたりしました。

アクリルガッシュは塗膜が弱いので
作業中に持ったりすると剥がれてきます。
この時点でトップコートをしておくと良いかと思います。
私はクレオスの水性ツヤ消しクリアーをエアブラシで吹きました。

爪や口、目には「タミヤエナメル」や「コピック」を使ってます。
コピックはクリアー系の塗料で透明感が出せて色数も多くgoodです。
ただ溶剤は強力でほとんどの水性塗料(油性マジックも!)を
溶かしてしまうようなので要注意。


歯や爪はエナメルのクリアーオレンジを塗り
エナメル溶剤(ジッポオイルも可)で
下地のアイボリーが出てくるようにエナメルを落として
・・・というか・・・
塗り残しが出るようにしていきます。
さらにコピックのピンク系やオレンジ系やカラーレスブレンダーで
同じように塗り残すというか・・・
まっ、そんな感じで!

目はVカラーのシルバーを塗り
エナメルのクリアーオレンジなどを塗り
最後につや出しのグローワニス(アクリルガッシュ用)を塗りました。


ウォッシングは
アクアオイルカラー「デュオ」のバーントアンバーを
オドレスペトロールでシャブシャブに溶いて塗りたくりました。
ウォッシングによって墨入れ効果やシャドー効果、
フィルター効果をねらっています。

ドライブラシは「タミヤエナメル」のバフやアクリルガッシュの基本に塗った色です。
ドライブラシによってハイライト効果や
ウォッシングによって落ちたトーンを明るく戻す効果をねらっています。

ヴェロキラプトル

完成品へ



以上、長々と書いてきましたが
「内容は無いよう」なんちて・・・。
(ありがちな親父ギャグ・・・)

最後までお付き合いいただいた方はありがとうございました。
ソフビキットを作ってみようと思った方がいらっしゃいましたら
また、少しでも参考になりましたら
幸いに存じます。

もっと良いノウハウや科学的根拠をご存じでしたら
教えていただけるとありがたいです。

新しいことがわかりましたら
加筆、訂正を行っていきたいと思っておりますので
よろしくお願いいたします。


2006年8月



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